未来を読み解く東洋の知恵、
第五回は「仮想現実の時代」です。
イメージは現実化する
「新しいIT(情報技術)が登場すれば、
人々の意識が変化していく」
「意識の変化が、社会の変化を呼び込み
新しい現実をつくりあげる」
最初は仮想現実であったものが、
いつしか現実へと変化していくと言うことです。

このことは社会という
大きな単位であろうと、
個人という小さな単位で
あろうとなんら変わりはありません。
「イメージしたことは実現する」と
よくいわれます。
そのことだけを表面的に据えると
「科学的」であることを標榜する人たちは、
なんだか非常にオカルトティックで、
信のおけない議論であると
思われるかもしれません。
しかし、
「意識とは何か?」「イメージとは何か?」
その本質を理解する。
そして、私たちの意識のありかたを
変容させていくメディアやイメージの力を
よく理解していくと、
このことはなんら
不思議ではなくなっていくでしょう。
なぜなら、
意識は「波動」としての
性質を持っているからです。
波動は、文字通り“波”です。

ある一か所で起きた小さな波動は、
共鳴、引き込み、干渉
といった作用・相互作用を
通じて全体に大きく広がっていきます。
池に落ちた小石のつくる小さな波動は
やがて池全体に広がり、
浮いているアメンボを揺すり、
岸辺を洗うでしょう。
メディアによって引き起こされた
最初の小さな意識の変化。
それは最初のうちは、
新しい仮想現実です。
それが、やがて波紋のように
社会全体の変化へとつながっていきます。
意識の変化・拡大
情報化社会とは、
意識の波動社会とも考えられます。
「メディアが意識を変える」
このことは、
マーシャル・マクルーハンが
指摘して以来、現代を理解する
キー・コンセプトの一つになっています。
人間は長い間、自分が見聞きする範囲の
「世界」の中で暮らしてきました。

その狭い「世界」だけが
人々にとっての全世界であり、
それ以外の世界は、
存在すると知識で知ってはいても、
なんら現実感(リアリティ)の
ないものにすぎませんでした。
別の世界は実在していても、
人間にとっては「ない」のも同然なのでした。
旅行者、旅芸人、商人、吟遊詩人
などを通じてもたらされる異国の語りが
庶民、農民にとって唯一、未知の
世界から漏れ出てくる貴重な情報でした。
この時代の人々にとって
異国の語りは仮想現実ですらなく、
おとぎ話に近かったかもしれません。
やがて版木による瓦版や木版による
書物の刊行が可能になり、
さらにグーテンベルグの印刷術の
発明によって、知識と情報の大衆化時代が訪れました。
異国の存在は語りではなく、
情報や知識として人々に広まったのです。
今やインターネットの
情報網は世界を駆け巡っています。
私たちは部屋から一歩も出ないで
世界の出来事をリアルタイムに知ることが出来ます。

人間が知ることのできる“世界”は、
ここに飛躍的に拡大しました。
マクロでは銀河から宇宙の極限まで、
ミクロでは原子、素粒子の極微まで・・・。
その情報爆発が人間にもたらした変化、
それは“意識の変化・拡大”でした。
“リアリティの変化”と
いってもいいかもしれません。
人々の「現実」は日常の身近な世界から
一気に拡大していきました。
“アメリカ同時多発テロ”を
世界の人々の多くは、ほぼ
リアルタイムに知っていました。
人間は、自分が直接経験したこと
のない知識やイメージも
「現実」として受け入れるようになっていったのです。
かつて、テレビに映し出された
“湾岸戦争”は、仮想なのか現実なのか?
頭では現実に戦争が
起こっていると解っていても、
テレビに映し出される映像は、
どこか映画を見てるような
感覚ではなかったでしょうか?
これに対して、
“アメリカ同時多発テロ”の映像からは、
はっきりとしたリアリティを
感じたのではないでしょうか?
“湾岸戦争”から“アメリカ同時多発テロ”
までの11年の間に、
我々の意識はメディアから流れる世界中の
情報にリアリティを感じるように変化したのです。

これからの時代は、
仮想と現実の境界線が
曖昧になって行くことでしょう。
脳を拡張するIT(情報技術)
人類の意識の拡大を可能にしたものは、
大きく分けて三つの要因があります。
1.経済体制の変化
2.テクノロジーの進歩
3.心の内側への探検-瞑想・修行・宗教など
このうち、経済とテクノロジーは
メディアの変化と密接につながりあって、
一つの系を構成していると考えられます。
テクノロジーの発展は、
そのたびに人間の感覚と思考に
「何か」を付け加えてきました。
いわば、情報をキャッチする
神経系を拡張してきたのです。
最初は、めがねや義肢などから、
身体の拡張が始まりました。
現在では臓器移植によって、
その範囲はさらに広がってきました。
その延長には、義体化、電脳化が考えられます。
SF小説に出てくるサイボーグに
近い状態となります。
これまでもSF小説に描かれた未来社会の
道具立ての多くは実現してきました。
私たちが慣れ親しんだ鉄腕アトムは、
人工知能の研究によって
いつの日か現実になるかも知れません。
物事の実現にはまずイメージが先行し
そのイメージに導かれて実際に
現実が変化していきます。

この事は、
前回までのメール講座でもお話しいたしました。
臓器移植の延長にサイボーグの
実現があることに、疑いの余地はありません。
今や、脳と神経系を拡張する
テクノロジーが発達してきました。
拡張現実(AR)という技術です。

現実と仮想を一体化させるこの技術は、
仮想と現実との区別さえ
つかないようになることでしょう。
この拡張現実は、
新時代の舞台に新しく登場しようとしています。
人間の可能性を広げ、未来社会へと
新しい潮流を作って行くに違いありません。
そして、
人々の意識や感覚も大きく変化していくでしょう。
すでに、新しい時代に向けて
意識や感覚が変化し始めた人も多くなってきました。
あなたも身の回りで“ちょっと
突飛な発想をする人”の話に、
耳を傾けてみてください。
そう言った人の中に、
新しい意識や感覚を持った人がきっといるはずです。
では、第五回「仮想現実の時代」は
この辺りにさせていただきます。
あなたと共により豊かな人生が創造できるよう
心よりお祈り申し上げます。